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2013年1月27日 (日)

【本】『中国「反日デモ」の深層』(福島香織=著)

『中国「反日デモ」の深層』(扶桑社新書)
福島香織=著 扶桑社=刊

最近Twitterは控え気味。日本のチベット関連ニュースへのリンクを紹介するだけで精一杯だ。ただ昨年、中国の“反日デモ”騒ぎの際、軽い気持ちで雑感をツイートしたところ、たくさんリツイートされてびっくりした。

チベット人だと軽く暴れただけで即「暴動」認定されるのに、漢民族はこれだけやっても「デモ」なのか。すばらしいバランス感覚だ。
https://twitter.com/osadayukiyasu/status/247571158726217728

Hannichidemo_100実際、仮に純粋に“反日”の意図を持つチベット人がいたとしても(ありえないが)、そこがチベットであり、彼がチベット人であるというだけでデモなんて許されないだろう。それどころか数人で仲良く歓談しながら歩いているだけで、武装警察が飛んできて解散させられるのを覚悟しなければならない。2008年以降、数人レベルのデモも弾圧される状態となり、追いつめられたチベット人は焼身抗議という手段を選ぶようになってしまった。

本書のテーマは“反日デモ”や反体制派への迫害の実態と、その背景にある政治的な暗闘であり、もちろんその部分に読みごたえがあるのだが、第二章「中国に“革命”は起こるのか」では、キルティ・ドルカル・ラモ氏(チベット女性協会会長)と在日チベット人ペマ・ギャルポ氏のコメントを交えて、チベット人の焼身抗議についても触れている。

この問題については答えるほうの気が重いのはもちろん、聞くほうも慎重に言葉を選ばなければと逡巡することになり扱いづらい。日本人にはわかりにくいメンタリティなので(私もわからないし、チベット人だってわからない人は多い)、本書のように色々な立場のチベット人自身の言葉がもっと伝えられるようになると、多少なりとも理解の助けになるだろう。

そもそも個人的には中国政府や中国共産党中枢のあれこれには昔からまったく興味がもてず、要職者の人名すらおぼつかない。中央のエライ人より、チベット自治区や青海省の幹部のほうがまだ名前を知っているぐらいだ。が、チベットの変化が中国の変化と密接にリンクしているのは明らかなので、ちゃんと興味もたなきゃ、という意味で、中国とチベット両方に造詣の深い筆者によって書かれた本書のような本は、中国の政治への興味を持続するモチベーションの救いとなってくれている。

2017年がひとつの節目らしい。でも、「はっきり言えることは、中国は予測不可能な、何が起こるかわからない時代がしばらく続く。」(あとがき)らしいよ。

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