チベット・アムド地方アバ(Ngawa)小紀行(7)キルティ・ゴンパの大法会
夕刻、キルティ寺の本堂前の中庭は、
エンジ色の僧衣をまとった僧侶たちで埋め尽くされていた。
早口のアムド語と手を打ち鳴らす音が響く。
僧侶たちはこれから仏教論理学の問答の試験に臨む。
ツェメー・ゴンチュー・チェンモ(冬季論理学大法会)が、このキルティ寺で行なわれるのは今回で2回目。仏教論理学の博士(ゲシェー)の学位試験は、伝統的にペーパーテストではなく、すべて口頭の問答で行なわれる。アムド地方各地から3000人とも言われる僧侶が集まった。
試験は日が落ちた後、夜通し朝まで行なわれる。その間、薄暗い本堂の中では読経が続く。
小坊主たちがお茶や食事の準備に走り回り、木の棒を携えた巨体の見張り僧が、堂内にぎゅうぎゅう詰めになった巡礼者たちを「もっと後ろに下がれ!」と蹴飛ばす。
本堂の屋根は色とりどりの電球で彩られているが、その光は弱々しい。
中に入れない巡礼者たちは、寺の周囲の巡礼路をひたすら回り続ける。
真っ暗な中、朝まで。
「3月までは何も起こらないだろう」
ある僧侶がそう言った。嵐の前の静けさの中で行なわれたこの試験には、6人が合格したそうである。