チベット人歌手タシ・トゥンドゥプが逮捕された(ウーセルのブログより)
12月3日、チベット人歌手タシ・トゥンドゥプ(Tashi Dondrup、扎西東知)が逮捕された、と『Times Online』(12月4日付)が報じた。北京在住のチベット人作家ウーセル(唯色)の中国語ブログ『看不見的西蔵』(Invisible Tibet)より、この事件についてのエントリーを(勝手に)全訳。
[言い訳]いつもながら正確さや、本来の文学的な格調を求める方は原文でご確認ください。特に歌の歌詞は少々テキトーです。中国語に詳しい方、間違いあったら是非ご指摘ください!私はシロートです。
Dondrupは日本語ではドンドゥプ、ドンドゥップなどとも表記されます。
▼原文
「著名蔵人歌手扎西東知昨日被捕」(看不見的西蔵 2009/12/04)
▼Timesの元の記事
「Tibetan singer Tashi Dondrup arrested over 'subversive' CD」(Times Online)
チベット人歌手タシ・トゥンドゥプが逮捕された。『Times』報道より
文/ウーセル(唯色)
著名なチベット人歌手タシ・トゥンドゥプが昨日(12月3日)午後7時頃、青海省西寧市で逮捕された。現在消息不明。
タシ・トゥンドゥプは青海省河南モンゴル族自治県セルルン郷出身。元々は県芸術団の専属歌手であり、民謡・オリジナル曲の弾き語りによりアムド地方で名を馳せている。両親は当地の牧民。姉妹が1人いる。2カ月前に結婚したばかりの30歳。
昨年リリースしたオリジナル曲『1958-2008の恐怖』は、民間およびネット上で広まり、その影響が甚大だったため、数日間拘禁された。彼はこう歌った。
西暦1958年、黒い敵がチベットにやって来た。
ラマが獄中に囚われた、あの年が、私たちは心底怖い。
西暦2008年、チベット人はゆえなく殴られた。
この世の民が虐殺された、あの年が、私たちは心底怖い。
今年11月、彼はソロアルバム(VCD)『傷跡のない酷刑』を西寧でリリースした。収録された13曲の内容は、ダライ・ラマや高僧の徳をしのび、チベットに宗教信仰の自由がないことを嘆き、2008年のチベット抗議事件を問い直すものだ。全部で5000枚が発行されたが、その反響は強烈で、多くの地方で売り切れ、瞬く間に当局の取り締まりを受けた。
河南県公安当局は、“反動歌曲”を歌って広めたという名目でタシ・トゥンドゥプを捕らえようとした。彼は逃れていたものの、結局捕まってしまった。歌を罪に問われたこの歌手が、どんな罪名で、どんな懲罰を科されるのか、今のところ予測はできない。ここに各界の関心を呼びかけたい。
このソロアルバムはすでにネット上で流布されている。ある曲の歌詞の大意を紹介しよう。
俺はダライ・ラマに会ったことはない。
思うに、俺は哀れな運命のチベット人だ。
俺は2008年の抗議に参加しなかった。
思うに、俺はハンパなチベット人だ。
俺は雪山獅子旗を掲げなかった。
思うに、俺はハンパな男だ。
『Times』は本日午後この事件を報じた。
[以下Timesの記事全文]
[訳注]歌詞の「黒い敵」について。チベット語では「中国」を伝統的に「黒い国」と呼ぶ。
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