チベットの「いま」を伝えるドキュメンタリー「恐怖を乗り越えて」(Leaving Fear Behind)上映開始
チベット人がチベット本土で撮影したドキュメンタリーフィルム「恐怖を乗り越えて」(Leaving Fear Behind)の上映が日本でも始まった。東京、仙台、長野、松本、名古屋、福岡などで日本語字幕版が上映される。撮影を行なった2人のチベット人が拘束され、そのうち1人は今なお行方不明となっている。
「恐怖を乗り越えて」(Leaving Fear Behind)は、2007年10月から今年3月騒乱が起こる直前にかけて、チベット本土で撮影されたチベット人たちの証言集。東チベットやラサで行なった100人を超えるチベット人たちへの35時間に及ぶインタビューを約25分に編集したものだ。遊牧民や学生など、ごく普通のチベット人たちが世界中に向けて、顔を出して、チベットの「いま」について証言している。
もちろん、中国支配下にあるチベットでの、この種の撮影には大きな危険が伴う。実際、撮影にあたったトゥンドゥプ・ワンチェンとゴロク・ジグメは逮捕された。
トゥンドゥプ・ワンチェンは1974年アムドのバイェン(青海省化隆)の農家に生まれた。1993年にいとこと一緒にインドに出たものの、チベットに戻った。いとこのギャルジョン・ツェティンは後にスイスに亡命。今回のフィルムはチベット・中国から持ち出された後、ツェティンの手で編集された。3月26日、アムドで拘束され、西寧に移されてから行方がわからなくなっている。
ゴロク・ジグメ(ジグメ・ギャツォ)はゴロク地方セルタ(四川省色達)生まれで、トゥンドゥプ・ワンチェンの友人。ラプラン・タシキル寺の僧侶である。撮影の助手役だった彼も3月23日に拘束された。甘粛省臨夏の刑務所に囚われていたが、10月15日に釈放されて寺に戻った。拘束中に拷問を受け、釈放後も監視されているという。
チベット人の「本音」描いたドキュメンタリー映画の制作協力者、7か月ぶりに釈放(AFPBB、2008/10/21)
タイトル「恐怖を乗り越えて」はこのフィルムのチベット語の原題「ジグデル」(Jigdrel)を日本語にしたものだ。危険を冒して、素朴な言葉でメッセージを伝えようとしたチベット人たちの切羽詰まった気持ちが、このタイトルに込められている。北京五輪を前にした彼らは、本当に危機感を抱いていた。3月の騒乱がなぜあれほど大きなものになったのか、わずか25分だが濃厚なこのフィルムから感じていただけたらと思う。
英語版は実は全編Google Videoで見られるので、一番下に貼付けておく。
今回日本で上映されるのは、Students for a Free Tibet(SFT)Japan が中心となって日本語字幕をつけたもの。
詳しい上映予定は、↓のページにて。
■"LEAVING FEAR BEHIND"「恐怖を乗り越えて」(SFT Japan)
■Leaving Fear Behind(公式ページ)英語
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