「坂本龍一×チベット人歌手Alan」の微妙〜な感じ(5/10追記)
四川省の通称“美人谷”出身のチベット人歌手Alan(アラン)がエイベックスからデビューしたのは昨年のこと。
6月のNHKの環境特番「Save the Future」のイメージソングを歌うことが決定した。プロデュースは坂本龍一。
このすごーく微妙な感じをわかってくれる方は、きっと少ない。でも一応書いておこう^-^;
YMO時代からずっと聴いてる坂本龍一、通称「教授」。今でもiPodに何曲か入っているが、その中に「Tibetan Dance」という曲がある。たしか1984年にリリースされたこの曲を聴いたとき、僕はまだ「チベット」という言葉を知らなかったように思う。
“47 years in Tibet”という、今まさにチベット人たちが背負っている苦難の歴史をまとめたショートフィルムをYouTubeで見かけた。この音楽は…と思ったら、やはり最後に「Ryuichi Sakamoto」というクレジットが出てきた。たしか1999年にはラダックのレーにダライ・ラマ法王を訪ね、「LIFE」というオペラ作品に映像で登場させている。いつだったかのダライ・ラマ来日講演のときも来ていたように思う。
その他にも色々あって、教授=年季の入った親チベット、親ダライ・ラマという図式が頭の中でできあがっていた。六ヶ所村とかLOHASとか、その延長線上で、きっとチベットの人権にも理解があるんだろう、みたいな、いかにもシロートっぽい単純な発想だ。まあ中国絡みのお仕事も多いことだから、普段から何か言うことはないにしても、今回のような事態になれば、さすがに何かアクションがあるんじゃないかと、ちょっと期待していた。
で、Podcast“i-morley”4月1日の回の冒頭に、いきなりその名前が登場した。
池田有希子さん「坂本龍一さんはいらっしゃらないんですか」
湯川れい子さん「断られました」
モーリーさん「断られました!?」
(中略)
湯川さん「私、坂本龍一さんがお断りになった理由は、よくわからないんですけど(略)」
4月8日に記者会見があった「14世ダライ・ラマ法王と中国政府首脳との直接対話を求める声明文」。文化人65人の賛同者の中に名を連ねることを断ったそうだ。この後「群れて何かすることが好きじゃないからでは?」といった発言もあり、個人的な活動をしている可能性は示唆されている。
【この投稿の一番下の2008.05.10追記を参照】
そして、つい昨日知ったのが、NHKの環境特番「Save the Future」でのAlan(ダワ・ドルマ)とのコラボだ。
中国法人ももつエイベックスにとって、Alanがチベット人だというだけでチベット問題と結びつけられるのは心外で、ものすごーく迷惑だろう。Alan本人もかわいそうかも。でも、「中国人」と言わず「チベット民族」を売りにしてデビューした以上、今さら引っ込みはつかない。公式ブログにも故郷のことを案じるファンからのカキコが見られる。
まあAlanはエイベックスという枠組みの中にいる限り、「ダライ・ラマをどう思いますか?」なんて質問をされることもないだろうし^-^;チベット問題とは隔離されて温かく見守られ続けるだろう。
一方、教授。なるほどこのタイミングじゃ「賛同者」は無理だろうなあと勝手に納得した次第。
エイベックスなAlanちゃんと組んでFutureをSaveする大切なお仕事があったのだ。
もしかしたら、チベット人Alan×親チベット歴の長い坂本龍一という構図をわざと作って、チベットやダライ・ラマ法王への注目を暗に盛り上げようという計算し尽くされたアーティスティックな手法なのかもしれない、とポジティブに解釈しておきたい。
基本的には日本では、エコは大歓迎でも、直接お金が絡んでくる中国の人権は×というのが現状の模様。
チベットがこんなことになって、その周辺での表現活動を生業とする者にとっては、親中国なのか、そうじゃないのかと問われる「踏み絵」的な状況が続きそうだ。
身の回りでも最近、直前で企画にストップがかかったとか、表現上の横やりが入ったとかいう話をいくつか聞いた。
営業上は、何もしないのが賢いんだろうが、精神衛生上、ていうか人として、なんだかちょっと難しい。
たいして失うもののない僕だってそうなのだから、大勢の人の生活を背負っている立場の皆さんはきっと大変なんだろうなーと思う。
というグダグダな文章のお詫びとして、お口直しにAlanのPVです^-^;
【以下2008.05.10追記】上記i-morley中の湯川れい子さんの発言の件、やはりモンダイになったらしく、その後、i-morleyのアーカイブから微妙な部分は削除された。その経緯については4月18日のi-morley「チベタン・リレー」で次のように語られている。
モーリーさん「その坂本龍一さんについて、先日、i-morleyがインタビューをした作詞家の湯川れい子さんが、ご自分の声明文ですね、映画監督の龍村監督と共同で声明された、あの文面に賛同の署名をいただきたいと、色んな人に署名をもらったところ、ピーター・バラカンさん、ロバート・ハリスさん、細野晴臣さん、木内みどりさん、などなどがサインをしてくださった。そして発言された、坂本龍一さんは、あの、『NO』というところに丸をしてFAX…」
池田さん「私たち、その理由がとても知りたかったんだよね」
モ「はい。そうなんです」
池「あえてNOって丸を付けるってことは、やはりそういうご意見がおありなんだと思うから、ぜひ聞きたかったの」
モ「そう、そこらへんのニュアンスは如何にということだったんですけども。その後ですね、お話をしていたところ、やりとりをした結果、坂本龍一さんはダライ・ラマ法王の立場を全面的に支持する、つまり、平和的な対話を求める、この一言に尽きるということなんですね」
池「そうよね。だってずっと活動なさってるもんね」
モ「しかるに、自分に送られてきた当初のドラフト、その署名用のドラフトというのは、坂本さんの見解では、中国に対してあまりにも挑発的であると。なので、これはあまりいい結果を生まないと思う。だから、この文面にはサインできない。ということが、NOに丸をしたことの真意だった、とのことなんですね」
池「なるほどね。で、坂本さんは個人でアート活動を、まだ当然展開なさっていて、それを通してチベット支援活動をなさっていると」
モ「アーティストだからできるチベット支援がある、ていうことだと思うんですが、このへんについては、坂本龍一さんご自身にi-morleyに出演をいただいて、お茶しながら、お聞かせいただきたい! これに伴いまして、先に配信しました4月1日のi-morleyの湯川さんが、坂本さんが丸をNOにしたと発言したくだりは、現時点、このタイミング、長野で色々あるタイミングで配信を続けると、ニュアンス上、誤解を招くおそれがあると判断し、i-morleyは当該部分を削除、わからないようにフェードさせました」
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