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2005年9月29日 (木)

中国の充実した教育制度のおかげ様で、チベット人の識字率が下がった

中国が発表した統計によると、チベット自治区の識字率(読み書きできる人の割合)が大幅に悪化した。児童の就学率も低下した。教育・職業訓練の機会が得られないまま、チベット人たちは、流入し続ける漢族移民たちに仕事を奪われていくのだろうか?

英国Tibet Information Networkの後を継いだドイツのTibInfoNetによると、2004年版中国統計年鑑で発表されたチベット自治区の15歳以上の非識字率(2003年)は54.9%。前年の43.8%から11.1ポイントも悪化した。6歳以上の児童の小学校就学率は55.1%。これも前年62.0%から6.9ポイント下がった。中学校就学率は14.2%でこれも低下しており、中国全体(57%)、隣接する四川省(約50%)と比べて低さが際立つ。
[チベット自治区(TAR)、青海省(Qinghai)、甘粛省(Gansu)、四川省(Suchuan)、中国(PRC)全土のデータは元の記事"Illiteracy and education levels worsen in the TAR despite development drive"(英語)を参照して下さい]

もちろん統計なんてものは、どこの国のものであれ話半分ぐらいに思っておいたがほういい。しかも中国の統計となれば、間違いや誇張や政治的意図を十分考慮する必要がある。(ていうか識字率ってどうやって調べてるんだろう? 読み書きって、チベット語でも中国語でもいいんだろうか?)
以前は「ちゃんと充実させてます!」と報告しなきゃ中央に怒られたが、最近は「まだまだ学校が足りません!」と報告したほうが援助を引っ張ってこれる(→それに乗じて儲けられる)から好都合、とかいうふうに風潮が変わったのかもしれない。

とまあそういった諸々をちゃんと考えた上で、TibInfoNetは、この数字の背景をいくつか指摘している。

チベット自治区の非識字率(文盲率)の推移は:
1998…60.0%
1999…66.2% ↑
2000…47.3% ↓
2001…45.5% ↓
2002…43.8% ↓
2003…54.9% ↑+11.1%

まず、識字率は2000年代に入って大きく改善された。これは「西部大開発」スタートに伴って莫大な援助投資がもたらされたことと関係があると思われる。
そして、識字率は2003年に早くも失速した。この2000年から2003年に間に、教育関係者の人件費がほぼ倍増したことも統計に示されている。教育のための投資が人件費で吸収されてしまったのではないかと考えられる。

illiteracy_tau_schoolまた、チベット自治区の1人あたりの学校数は中国で最低であるにもかかわらず、小学校の数は895校(2002年)から892校(2003年)に減少した。中学校・高校の数は100から105へと増えており、そのうち2校は高校(高級中学)だった。
[写真は東チベットの小学校。子どもたちは広い範囲に散らばって住んでいるが、寄宿舎を設ける予算がなかった。通える子どもが減っていき、数年後に閉鎖された]

チベット人が職を得るのに直接役立つ職業学校も4校から2校に減った。4校の時点(2002年)でも、人口1人あたりの数は中国全土平均の1/5しかなかった。一方、大学レベルの学校は3校から4校に増えて、人口比で中国一の割合を誇る。

つまり、中国は、チベット人が必要とする初等教育・職業教育の機会を減らし、チベット人にほとんど縁のない高等教育ばかりを充実させてくれたことになる。移民してきた漢族あたりが、その恩恵に与っているわけだ。

illiteracy_lhasa_schoolそもそも教育が“役に立たない”というのも就学率が伸びない理由だろう。
教育は無償とか言っているのは建前だけで、特に都市部以外では、なんだかんだ適当な名目をつけて学校が授業料を徴収していることが多い。イナカであるがゆえに予算がないのだから仕方がない。チベット人家庭にとっては大きな負担となっている。
また「学校を出たら仕事を世話する」という政策は2001年に破棄された。もはや教育に投資する価値なしと判断する親も多い。
[写真はラサの私立小学校]

[参考→青海省でチベット人学生200人が就職難に抗議(チベット式)]

もちろん、学校が中国語を中心とした中国化教育の場となっていることへの反発もあいかわらず強い。
これだけデメリットが揃ってしまうと、比較的恵まれた一部の都市住民を除いては、どうせ教育を受けさせるなら、ダライ・ラマ法王のお膝元であるダラムサラへ留学させようという気持ちになるのも無理はないかもしれない。
[参考→チベット難民の亡命に同行したドキュメンタリー『ヒマラヤを越える子供たち』が再上映される(チベット式)]
  →『ヒマラヤを越える子供たち』(KIKU)

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