チベット独立を描いたミステリー小説『ヒマラヤン・ブルー』(山石 恵)
『ヒマラヤン・ブルー』(山石 恵)新風舎文庫(←amazon.co.jpにリンク)
旅先のシンガポールで萌子はスワミと出会い恋に落ちる。しかし、一枚のフロッピーディスクを萌子に託しスワミは謎の死を遂げる。その後、残された萌子の周囲で起こる殺人事件……。謎を追う萌子の前に立ち塞がる中国情報部。スワミと同じ顔の男・楊は何者か。
騒乱から政府瓦解へと突き進む中国を後に、聖地チベットで萌子は歴史の闇に葬られた二人の兄弟の、悲しい宿命を知ることに……。書き下ろし長編ミステリー。
↑新風舎の紹介ページより
せっかくのミステリー仕立てなので展開は書かないでおくが、
平たく言うと、旅先で優しくされた男とついやっちゃったために、
チベット独立運動に巻き込まれていく日本人女性の話。
最後はラサまで行って活躍する。
最初から最後まで“私”が語るスタイルのためか、
“私”の知識と交際範囲内のことしか語られない。
職場や仕事(フラワーコーディネーターだそうだ)の話はやたらと細かいのに、
国際情勢絡みになると、とたんに『サピオ』に載ってたような話を薄めた感じになる。
よく言えば“等身大”。
そのレベルに合わせられれば、“私”の成長物語に感情移入できるはずだ。
読後感を「いかにも女が書いた、って感じ」と語った女性がいたが、まさにそんなテイストもあり。あ、いい意味で(笑)。
著者について詳しいことはわからないが、たぶんチベットが好きな人なんだろう。
チベットにまつわる細かなガジェットがあちこちに散りばめられていて、適材適所きちんとハマっていると思う。
わざとらしさ、あざとさもなく、“私”を取り巻く周辺の設定については妙に通っぽくて好感度大。
でも、“私”については好き嫌いが分かれるだろうなあ(笑)。
まあすぐ読めるので読んでみて下さいよ。
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