チベット式祈りの旗“タルチョ”は進化するアートだ
チベットの風景を彩る必須アイテムのひとつがタルチョ。
“ルンタ”(風の馬)と呼ばれる馬の絵や、神仏に捧げるお祈りの呪文、仏教の経文などが刷られた旗のことだ。
[以下、写真をクリックすると、ちょっとだけ大きくなります]
家々の屋根の上や巡礼路、峠、橋など、チベット人の姿のある所にならどこにでも現れる。
タルチョを目にすると「あぁ、ここはチベットなんだ」と感じることができる。
[写真はラサのチャクポリ(薬王山)の巡礼路]
ラサなど中央チベットでは“地・水・火・風・空”を表わす五色の布を、万国旗のように、あるいは洗濯物のように(?)たくさん連ねるのが一般的。
タルチョ架け定番スポットの峠ともなると、おびただしい量のタルチョが何百年もかけて積み重なって、ちょっとすごいことになっている。
[写真は聖山カン・リンポチェ(カイラス山)の巡礼路にある峠ドルマ・ラ]
カム(東チベット)地方やコンポ地方、ブータン、シッキムなどでは、白一色の大きな布を、木の柱を使って幟(のぼり)状に仕立てたものが多い。“タルシン”とも呼ばれる。
[写真はカムのラガン(四川省康定県の塔公)草原。どこまでも続く幟(のぼり)状のタルチョが巡礼路の道しるべ]
カム地方では、白い幟(赤いのも多い)が山の斜面にぎっしり林立しているのが目を引く。遠くから見ると、幟の群れが三角形をなすように配置されていることがわかる。
それぞれの固まりが仏や菩薩・神々の姿。山の斜面に仏画を描いているようなものかも。
いつも見える場所から見守っていてくれ、というわけか。
カムの人々の信仰心、っていうか、怖いぐらいの執念を感じる。
[写真は同上ラガン寺の裏山。よくぞこれだけ並べたもんだな、しかし]
同じくカム地方では、タルチョを立体的に、かなり凝った構成で組み合わせたオブジェ(?)も多く見られる。
たぶんタルチョで立体マンダラを描いているんだと思う。
“タルチョ・アーティスト”たちが日々“仕事”を競い合っているに違いない。
なんというか「これだけ気合い入れてるんだから、わかってくれよ」的な迫力に、頼られた神仏・菩薩の皆さんは思わず優先順位を上げてしまいそうだ。言うこと聞かないと後が怖そうだし。
カムの人々は、タルチョ作りにおいても熱いのだ!
[写真はデルゲ(四川省徳格)のケサル王関係の聖地にあるタルチョ群。デルゲとケサル王については紀行「チベット大蔵経の郷デルゲ」をどうぞ]
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