文成公主が主役のコバルト文庫『風の王国』(毛利志生子)
噂のチベ系ライトノベル『風の王国』(毛利志生子著、集英社コバルト文庫)、ついに読みました!
チベットから帰っていきなりコバルト文庫かよ、って感じですが、その前に、文庫化された『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一著、新潮文庫)上下巻を読んでウォーミングアップ(笑)。コバルト文庫だからと思って油断していると、うっかりストーリーに引き込まれてしまってアラ探しができなくなる危険がありますから、“いかにも”ノンフィクションって人の本を読んで心の準備をしてみました。
さて、肝心の『風の王国』の中身については、すでにうらるんたさんの「ちべログ」8月30日号で語り尽くされています。
学生時代にチベット語を勉強したこともあるという著者だけあって、残念ながら(?)トンデモとはほど遠く、史実をふまえた設定にもとづいてストーリーは展開します。“偽公主”である文成公主、公主をさらった謎のチベット青年、トンミ・サンボータ、ガル・トンツェンといったキャラも、それぞれ“なるほど”な動きをしてくれて、多少なりとも元ネタを知っていると、もうちょっとヒネってほしかった、なんて贅沢な感想も言いたくなります。でも、余計な枝葉末節をうまく切って、シンプルかつスリリングなラブストーリーにしているなあとは感じました。
文成公主にまつわるお話というと、そりゃもう今なお膨大なものが伝わっているわけですが、日本でいうところの水戸黄門のように、後生になって面白おかしく色んな話がくっついてきて、どれが本当やら、もはやわかりません。サイドストーリーとして、ほとんど竹取物語かと思われるような頓知をはたらかせて“嫁取り”に成功し、あげくチベットに連れていく途中で公主とデキてしまったガル・トンツェン(後に発覚し、国王に目玉をくり抜かれる)なんてのもあります。
成りゆき上、続編(すでに刊行されている)も読むことになりそうです。これまで控えめだったキャラが大活躍しそうな気がしますが、このまま地道にチベット古代史をベースに展開するのか、それとも魔術絡みのとんでもない方向へ行ってしまうのか。この著者の作風を知らないので、なんとも言えませんが、ラサに赴いた後、嫉妬に燃えるネパール妃ティツンと女の戦いが……てな昼メロ的展開にだけはならないんでしょうね(^^;
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